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Les Années Folles

第一次世界大戦が終結した1920年代。
かつてない好景気に湧いていたフランスは、この時代をレザネフォル(狂乱の時代)と呼び、
モダン・パリの芸術家たちに大きな影響を与えました。
当時、拠点となっていたのが、芸術の街として名高いモンマルトルとモンパルナス。
貧しい芸術家たちは、ナポレオン3世による都市改造でパリ市内を追われ、北部モンマルトルに居を移しますが、
そこが文化の中心地として花開き、家賃が高騰しだすと、今度はセーヌ川左岸のモンパルナスへ移り住みます。
そんなパリの下町に集う画家たちは、新しい様式を取り入れつつも特定の流派に組みすることなく、己の制作活動に励みました。
この時代は1929年に起きた世界恐慌まで続きます。
2024年春夏リッチモアは、代表的な5人の画家を通し、パリが華やかに輝いたレザネフォルの色彩を素材&デザインに込めて展開します。

1 TOULOUSE-LAUTREC
「アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック」

モダン・パリの幕開けに名を馳せたのは、トゥールーズ=ロートレック。
彼は初期のモダン・パリの魅力をクロモリトグラフィ(多色刷石版)という新たな手法で表現しました。
単純で大胆な構成の石版画は、油絵にはなかった引算の美学。
この技法で伝説のキャバレー「ムーラン・ルージュ」のポスターを手がけ、
芸術と娯楽文化で賑わっていたモンマルトルで人気を得ます。
このセクションは当時の退廃的なムードを軸にしたアバンギャルドなスタイル。
暖色×黒という大胆な色の切り替えにも注目を。
BR-14402

キラキラと光るクチュールライクの異素材使いのポンチョ。
華やかなパリの街を愛したロートレックの眼差しを感じて。

使用糸

ランタンモール、スビンゴールド、サスペンス

BR-14403

色彩の線条を重ねたプルオーバー。長編みと鎖編みで縦に編むだけ。
人々の熱気を内包するモンマルトル。昼夜の情景をデザインに落とした一着。

使用糸

モンパルナス

BR-14404

片袖を通して着るかぎ針編みのショール。イメージしたのは踊り子の躍動感。
ロートレックの新境地はキャバレー“ムーラン・ルージュ”を描いた一枚のポスターで開かれました。

使用糸

ランタンモール

BR-14405

ワイドサイズの羽織りはボディラインを拾わない優れもの。
シンプルな透かし模様に色の切り替えを大胆に配した遊び心が魅力です。

使用糸

ランタンモール、ドラ・マール

2 UTRILLO
「モーリス・ユトリロ」

ユトリロは女流画家シュザンヌ・ヴァラドンの私生児として生まれました。
一時期はロートレックの絵のモデルでもあったヴァラドン。
奔放な母親の愛情を受けることなく育ったユトリロは、孤独と苦悩を癒やすために絵を描き始めます。
作品には静謐で哀愁漂うモンマルトルの街並みが多く、
中でも白色を塗り重ねて建物の描写した「白の時代」が印象的です。
このセクションは白を基調としたカジュアルスタイル。
表情の違う素材や編み地の組み合わせで白の世界に深みを与えます。
BR-14407

曇天と白壁の建物の組み合わせはユトリロが好んで描いた構図。
この配色を反映させたラグランプルは、衿ぐりから2種類の透かし模様を編み下げます。

使用糸

エコール・ド・パリ

BR-14408

丸モチーフを編み込んだシルクボレロ。大胆に配置した後ろ身頃がポイント。
パリのサクレ・クール寺院を飾るステンドグラスの丸窓を模して。

使用糸

ザ・シルク

BR-14411

ユトリロの作品は1920年頃から人気を集め、彩り豊かな「色彩の時代」へと移行します。
ネックから編む扇模様を使った丸ヨークプルは、“青色が神”というユトリロの言葉をベースに。

使用糸

モンパルナス

BR-14412

ユトリロの育ったモンマルトルは漆喰の壁と階段が並んだ白の世界。
そんな思い出を編み込んだダイヤ柄と透かし模様プルオーバー。直線的なシルエットが美しい。

使用糸

スビンゴールド

3 LAURENCIN
「マリー・ローランサン」

レザネフォルは女性開放の時代でもありました。
パリ生まれのローランサンもまた女流画家として活躍したひとり。
モンマルトルで出会ったピカソなどの画家からキュビスム(立体主義)の影響を受けつつも、
やわらかな色彩を生かした愛らしい独自の画風を築きます。
当時の上流婦人の間ではローランサンに肖像画を発注することが流行となりました。
このセクションはパステルカラーによるロマンティックでフェミニンなスタイル。
レーシー調など洗練されたデザインです。
BR-14414

中央から脇に向かって編み広げる簡単なかぎ針編みのロングベスト。
女性を魅力的にみせるのは、やはり女性。
男性の画風を真似しなかったことが、ローランサンならでは持ち味に。

使用糸

ゲルニカ

BR-14416

優美な社交界の女性たちの肖像画を数多く描いたローランサン。
淑女のドレスを模したプルオーバーは裾まわりを扇模様のフリルで飾ります。
ボディは棒針、フリルはかぎ針で。

使用糸

エコール・ド・パリ

BR-14417

女性らしいフレア袖のボップルプル。記憶に残る甘美なローズピンク。
“死んだ女よりもっと哀れなのは忘れられた女です”。それはローランサンが残した詩の一節。

使用糸

モンパルナス

BR-14418

男性が描く肉感的な女性とは一線を画したローランサンの女性像。
身頃と袖の模様を切り替えた繊細なラグランプルは彼女の可憐な世界観そのもの。

使用糸

スビンゴールド

4 MODIGLIANI
「アメデオ・モディリアーニ」

イタリアのトスカーナ地方に生まれたモディリアーニは、
1906年にパリ・モンマルトルに移住し、1909年にモンパルナスへ移り住みました。
アフリカ、アジアなどの民族美術や彫刻、後期印象派の画家セザンヌから影響を受け、
画風は次第に細長い顔と首、なで肩、瞳を描かない目という
得意なスタイルの肖像画や裸婦画へと変わっていきます。
このセクションはスキンベージュにカーキ、赤茶、青緑を合わせた
落ち着きのある配色と細長のシルエットを生かしたスタイルを提案します。
BR-14420

モディリアーニ風、細長シルエットのプルオーバー。
スクエアネックがデコルテをきれいにみせます。かぎ針編みのダイヤ柄に方眼を合わせて。

使用糸

ゲルニカ

BR-14421

モディリアーニが後年、力を注いで描いたのが裸婦画。
Aラインのロングジレは、スキンベージュの透かし編みに、多色糸を合わせてメリハリを。

使用糸

ランタンモール、スビンゴールド

BR-14422

青いブラウスの婦人像”や“青い目の女”など、多くの肖像画で青の陰影を操ったモディリアーニ。
4種類の模様を組み合わせたAラインロングベストも青でまとめて。

使用糸

モンパルナス

BR-14423

表と裏の引き上げ編みの模様とピンクの濃淡で魅せるプルオーバー。
ドロップショルダーのデザインは、モディリアーニが描くしなやかな女性の曲線美を演出。

使用糸

エコール・ド・パリ

5 KISLING
「モイーズ・キスリング」

スリングは貧困にあえぐエコール・ド・パリ(1920年代、パリに集った外国人芸術家の総称)の
画家の中でも、比較的、成功を収めた画家です。
ポーランド生まれのキスリングは、明るい色彩の中に哀愁を秘めた肖像画や花の絵を得意としました。
モンパルナスにアトリエを構え、20代後半での個展が成功し、
社交的だった彼は「モンパルナスの帝王」と呼ばれるように。
このセクションでは、ヴィヴィッドカラーやマルチカラーによるスポーティなカジュアルスタイルを展開します。
BR-14425

1929年に描かれた“花”は、黒の花瓶と色鮮やかな花の作品。
その配色を反映したY衿カーディは、素材違いの糸のニュアンスと袖口の飾り編みをアクセントに。

使用糸

モンパルナス、スビンゴールド、ドラ・マール

BR-14426

“エコール・ド・パリ”という糸で編んだシンプルな直線ベストは、四角いキャンバスに自らの存在理由を問い続けたキスリングの情熱を表現。
目落としとドライブ編みで透け感を演出。

使用糸

エコール・ド・パリ

BR-14427

“ルネ・キスリング婦人の肖像”はキスリングが妻をモデルに描いた作品。
その色彩を透かし模様のプルオーバーに。分散増目で裾に向かって模様を広げます。

使用糸

ザ・シルク

BR-14429

2度の世界大戦とアメリカ亡命を経て、晩年、フランスに戻ったキスリング。
濃密な時の流れを編み込んだベストは深く濃い緑のグラデーション。かぎ針編みで衿側から編み下げます。

使用糸

エコール・ド・パリ